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2012年09月07日

英文は後ろから覚えるべし

意外に知られていないらしいのだが、英文(というより、前から再生すべきものなら何でも?)を分割して覚えるときは、後ろから覚えた方がよい。

理由はこうだ。簡単のため、前半と後半に2分割して覚える場合を考える。

まず、仮に前半を先に覚えた場合、その時点では

 前半:記憶が強い
 後半:記憶が弱い

であるが、この状態で前から再生しようとすると、前半は記憶が強い上にスタート直後だから簡単に再生できるが、その間に後半の(ただでさえ弱い)記憶がかなり弱くなり、再生しづらくなる。

逆に、後半を先に覚えた場合、その時点では

 前半:記憶が弱い
 後半:記憶が強い

であるが、この状態で前から再生しようとすると、前半は記憶が弱いもののスタート直後なので大きな困難なく再生でき、後半は(元々記憶が強いから)記憶が少しぐらい弱まってもやはり大きな困難なく再生できる。

この点について指摘したものは、管見内で3冊ある。古い方から順に

 吉『英語超独学法』pp.78-81
 新崎・高橋『眠った英語を呼び覚ます』pp.23-26(-47)
 三宅『いつでもやる気の英語勉強法』p.87

なかでも『眠った〜』は20ページ以上にわたる実践編付きであり、長文までトライさせてもらえる(私はやってない〜♪)。

この方法は、慣れた英文よりも、不慣れなもの(今の私なら独文)を学ぶときにヨリ役立つように思う。



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2012年07月10日

文単位の反聴とシャドーイング・2

今日は先日購入した『あたりまえながらなぜ英単語はすぐ忘れてしまうのか?』を使用してみた。最初の2単元で(またもや)18文。

作業内容は昨日とほぼ同じ。かけた時間もほぼ同じ。

ちょっと横道にそれるが、この教材の音声は、日本語も英語も同じ女性が読んでいる。おそらくバイリンガルなのだろう。少なくとも日本語に関しては訛りは全くないのだが、英語の方は今の私の実力では自信を持って判断できない。発音はキレイだし、おそらくアメリカ英語なんだろうと思うのだが、どうもR音性母音が響かないのだ。どこで生まれ育ったんだろう?

さて、最初のいくつかをのぞけば、今日になって初めて触れた例文ばかりであったが、「2倍速でシャッフル再生しても聴き取りには困らない」というレベルには、簡単に辿りついた。やはり、小さな単位で反復するのは効果的だ。

しかし、シャドーイングとなると話は別で、たとえ「×1.0」速であってもそれなりの口慣らしが必要だと感じた。今日はやらなかったが、口慣らしにはチャンク単位での音読が有効だと思う。何度も何度も音読して、スムーズに口が動くまでやるわけだ。

ただ、こういった作業をたくさんやっても、それだけでは話す能力の向上にはなかなかつながらないのも事実だ。もちろんその理由はわかっているので、いろいろ工夫しているところ。


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2012年07月09日

文単位の反聴とシャドーイング

音読やシャドーイングについて調べていたら、「〜1文ずつシャドーイングすることが大事〜」という記事を見つけた。その内容に大きく触発されたので、私もチャレンジすることにした。

英語教材の CD はすでに100枚以上リッピング(CD からパソコンへの取り込み)しているが、編集は一度もしたことがなかった。そこで、VECTOR からこのフリーソフトをダウンロード。私が必要としているのは比較的簡単な機能であるわけだが、このソフトはそういった基本的な編集作業がかなり直観的にできる。(ただし、他のソフトとの比較は今の私にはできない。)

何を素材にしようか迷ったが、とりあえず、10年近く前から使っている『英会話データベース 必須1200』(絶版?)の最初の単元(18文)を選んだ。この教材の CD は全体(40分程度)をおそらく300回は聴いていて、かなり耳にこびりついているし、スクリプトを見ればその部分の音声がありありと思い浮かぶ。特に最初の単元は、分速300語で音読できるところまで反復しており、当然のことながら、スラスラと暗唱できる。だが、それをあえて使用する。

ファイルの分割は昨晩のうちに完了。たったの18文ということもあって、簡単に片付いた。

今朝になってそのデータをウォークマンに転送し、再生ボタンを押してみた。ところが、「再生できません。未対応の形式です。」と表示されてしまう。元データは WMA だったので、上記ソフトで編集した後の保存にも同じ(はずの) WMA を選択したのだが、なぜかうまくいかない。

何か細かい設定の違いなのかもしれないが、時間がないため細かい実験はしていない。結局、MP3 で保存し直して問題回避。

始業2時間ちょっと前に家を出て、会社まで歩きながら以下の手順で試してみた。

(1) 1文ずつ「×0.75」速でリピート
  ・何度も聴き
  ・何度も口ずさみ
  ・何度もシャドーイング
  ※細かい部分について多くの発見があった。

(2) 同じやり方でもう一度
  ・反復回数は少なめ

(3) 「×1.0」速に変更

(4) 「×1.5」速に変更
  ・ここから (7) については無理にシャドーイングしない

(5) 「×2.0」速に変更

(6) 18文全体を通してリピート(「×2.0」速)

(7) シャッフルリピートにする(18文全体、「×2.0」速)

(8) 「×1.0」速に戻す


結果がどうだったのかは、今日は書かない。一晩置いてみたいのだ。

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2012年04月21日

解釈力の付け方

Facebook上で勧められたこともあって『英語リーディング教本』を購入、約4時間かけて全38例文を図式化してみた。最後のほうはかなり複雑な文であったが、逆に言えば、わが英文構造図の特長が活きる部分でもある。

しかし、「作文力を基盤にもたない解釈力は、あぶなっかしい解読力であり、読解力ではありえない」(種田輝豊『20ヵ国語ペラペラ』p.166)ということ、つまり、解釈ばかりに力を入れるのは、作文力と解釈力との乖離につながるだけでなく、肝心の解釈力も砂上の楼閣で終わる可能性が高い、という点にも注意が必要だ。

そしてそのことは、どんな図を用いてどんな丁寧な解説を加えようと変わらない。問題は対象よりもむしろ方法なのだ。

幸いこの『教本』で扱われている例文は38個だけで、それぞれへの解説もかなり丁寧である。また、とても簡単なものからかなり複雑なものまで、構造上の難易度を考慮して並べられている(ただし、比較・否定・話法・倒置がないなど網羅性に欠ける部分もあるし、体系性は分かりにくいと思う)。そこで、次のような課題を自らに課してみてはどうだろうか。

 各例文につき、
 (1) 英文の構造を図式化してみる。
  (まず自力で取り組み、その後テキストで確認すること。)
 (2) 英文の構造と意味を解説できるようにする(自己講義法)。
 (3) 和訳から英文を再現できるようにする。
 (4) 例文をアレンジして新しい英文を作る。

たくさんの問題を中途半端に解き散らかすよりも、少数の素材を徹底的に掘り下げた方が力が付く。これは数学や物理などについてよく言われることである(私も東大受験対策では数学・物理でこの方法をとって成功した)が、英語の場合も文構造などについては同じ理屈が成り立つのである。

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2011年05月28日

日英サイトラの弱点(瞬間英作文での注意事項)

別にサイトラ自体が悪いわけではないのだが、その弱点についてはあまり認識されていないようなので、少し書いておきたい。

サイトラは正式には「サイト・トランスレーション」、つまり、元の文を見ながら(口頭で)訳出していくものである。通訳訓練の一つとして知られている。

今回は「日→英」方向について考える。日英サイトラは瞬間英作文とほぼ同義であり、熱心に訓練すれば表現の知識が増加し、初見の文でも瞬時に訳せるようになる。しかし、実戦に使える作文力の養成という観点からはそれだけでは不十分なのではないか、というのが今日のテーマである。

では「実戦」とは何か?

実際に日英通訳をする場面を考えてみてほしい。まず誰かが日本語で何かを言う。例えば「土曜までに仕事を全部すませるならば、日曜日は映画を見に行ってもよい。」(中尾『英作文』p.222)といった文のかたちで発言する。そしてそれに対して通訳者は、例えば“You may go to the movies on Sunday provided that you finish your work by Saturday.”のように口頭で訳出するわけである。

しかし、実際の通訳がサイトラと最も異なるのは、「元の文は書かれていない」ということである。つまり、「原文を見ながら訳出する」ことは不可能なのである。これはやってみれば痛感させられることであるが、元の発言を聞いた瞬間にその文の全体像とともに「土曜」「仕事」「日曜」「映画」といった具体的なパラメータを頭に入れ、更にそれらを維持しながら的確な構文と語句を使って(同時に音声面の調整もしつつ)訳出していくというのは、非常に大きな負荷である。自分で考えた内容を英語で喋る場合は通訳の場合よりは負荷が小さくなるが、それでも慣れるまでは困難を覚えるはずである。

これは知識の問題ではなく、知識を扱う「アタマ」、心理学で言う「ワーキングメモリ」の問題である。そしてこの問題に対処するには、普段からそれを想定した訓練をしなくてはならない。その訓練とはもちろん、原文を見ないで訳出することである。ヨリ具体的には次のようにするとよいであろう。

まず、利用する教材は通常のサイトラと同じでよい。違うのは使い方であり、和文を読むときに、書かれた内容をシッカリ理解し、頭の中に明確にイメージすることが大切である。その度合いとしては、和文を見ずにその内容を再現・説明できるかどうかで判断する。そして、何よりもここが大切なのだが、訳出するときには、書かれた原文に頼らず、自分の頭の中に描いたイメージを見ながら行うようにする。このようなプロセスを踏めば、たとえ外見上は和文英訳であっても、実質的には自発的な英作文の訓練になる。

これは瞬間英作文を実践するうえで非常に大切なポイント(の一つ)である。私はこれを「サイトラ」ならぬ「イメトラ」(「イメージトラック」ではなく「イメージトランスレーション」の略)と呼んでいる。

にもかかわらず、私の知る限りでは、この「イメージする」ということの重要性を指摘している人・サイトは意外に少ない。その数少ない一つが、このページ。このサイトには瞬間英作文の方法や効能について参考になることがたくさん書かれているので、是非精読されたい。

実は私自身もこの問題に関連することを何年も前に書いている。→こちら

語学に限ったことではないが、外見上同じ学習・訓練をしているにもかかわらず効果の出方が同じにならないということが多々ある。それはなぜかと考えてみると、こういった外から見えにくいプロセスに原因がある場合が少なくないのではないだろうか。今回の「原文を見ずに」というのはその一つにすぎない。自分自身の具体的なテーマに即して再検討してみることが大切である。


追記
ちょっと思ったのだが、英作文のテキストはともかくとして、文法書の場合、例文の和訳は例文の後に掲載されているのが普通である。試しに手元にある10冊くらいの文法書で確認したところ、和訳が先に掲載されている文法書は『完全マスター英文法』だけであった。

ところで、同書のpp.xiv-xv(本文より前のページ)には「習得プラクティスの方法」という部分があって、そこに、
「この作業は、日本文からの英語の直訳ではなく、‘言いたい状況’が日本語で示してあって、その‘言いたい状況’(当然英語から見た日本語は、英語からの直訳ではなく意訳です)を英語で言ってみるという作業です(よって、モデルの英文以外の英語表現方法がある可能性はもちろんあります)。」
と書かれている。これが何を意味しているのか、購入当初に読んだときにはよく分からなかったのだが、ひょっとすると私が上で述べたことに近い考え方なのではないだろうか。もしそうなのであれば、そういう大事なことはもっと分かりやすく書いてほしいとつくづく思う。中身が充実している分、なおさらである。

なお、著者のサイト「アイビーリーグ・イングリッシュ」によると、同書には約7000の例文が掲載されているとのこと。同サイトには全例文の音声データもあり、無料でダウンロードできる。

posted by 物好鬼 at 10:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 例文そのものの学び方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年02月20日

2秒以内に言えることは記憶しやすい

日常生活の中で、ちょっとした文字列や数列を短時間だけ覚えることがあると思う。例えば電話番号をダイヤルし終わるまで口ずさみながら覚えておく、といったことだ。

一度に何文字・何ケタまで処理できるかは個人差があるが、心理学者によると、文字数・ケタ数よりも時間のほうが大切であるらしい。制限時間は約2秒なので、その間に言えるかどうかで大きな違いが生じる。同じ文字数・ケタ数でも、スラスラ言える人とそうじゃない人とでは、覚えやすさに違いが出てくるわけだ。

このことはもちろん英語の例文についても言える。

手元の教材から適当な例文を見つけて覚えるとしよう。大事なのは、いきなり暗唱しようとするのではなく、まずはマイペースでよいから何度も音読して、口がスムーズに動くようにすることである。それで2秒以内に読めるようになってから、ソラで反復するのだ。
※文が長すぎる場合は適宜分割して覚えてから合成すればよい。

私の場合は有名なクジラの公式“A whale is no more a fish than a horse is.”を利用した。早口言葉のように言えば何とか2秒以内に収まるので、それができるようになってから何度かソラで言ってみた。そしたら、それまでは苦手意識があって覚えられなかったこの構文が、いとも簡単に覚えられたのだ。実に痛快な経験だった。

こうやって一応覚えたら、クイックリスポンス(課題リストを作って即座に思い出せるようにする)に取り組むことで、ほどなく長期記憶に移行させることができるはずだ。

これは非常にシンプルで、また他の覚え方とも併用できるものなので、記憶方法にあれこれ悩んでいる人は、試してみる価値があるのではないかと思う。いずれにしても、記憶力を向上させようと思ったら、記憶することから逃げていてはいけないのだから。
posted by 物好鬼 at 22:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 例文そのものの学び方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年01月29日

結果よりもプロセスを習得せよ(いろいろな例文の暗唱・その2)

前回はいろいろな種類の例文を、自分なりのノウハウを使って覚えたわけだが、あれから約1週間になる。その後はというと、新しく購入したWalkmanに100枚くらいのCDをダビングするのに忙しく、先週紹介した例文たちは完全に放置していたのである。それでどうなったか?

全部完全に覚えていた! それもスムーズに再現できたのである。

いくつかあった中でも、先週のD、つまり

“It seemed likely that the waste buried in the drained swamps would contaminate the soil, but that information was withheld from area residents.”(『ALL IN ONE 4th Edition』p.180)

については、冒頭の3語だけをヒントにして思い出してみた。結果は興味深いものとなった。

まず文の内容を思い出そうとしたのだが、これは30秒から1分くらいかかっただろうか。先週時点でもスムーズに思い出せなかったものを1週間完璧に放置していたのだから無理もない。それでも構造図をイメージしているうちに、徐々に全体像を思い出すことができた。

次は、その内容から英文を再現してみた。これは、驚くなかれ、先週時点よりもはるかにスムーズにできたのである。やや意外なことではあったが、何もしない1週間で頭に定着したということなのだろう。これは心理学ではよく言われることである。

今回の結果をどう評価するかだが、私としてはほぼ理想的なものだと考えている。

言いたい内容というのは現場で考えつくものだから、問題は、その内容から出力(口に出す)までのプロセスである。である以上、例文学習の真の目的は、そのプロセスで要求される<知識と能力>を習得することである。

言い換えれば、「内容から例文を再現する」という部分さえスムーズにできればよい、ということである。以前にも書いたが、「例文学習」とは言っても、習得すべきなのは例文そのものではないのである(この点を誤解している人があまりにも多い気がする)。

今回の実験から言えるのは、私の新しいノウハウにはかなりの効果があるということである。今後は更に多くの例文で実践を積み重ね、実績を確かなものにしていきたい。

蛇足であるが、語学は体で覚える面が強いものなので、音読や再現を何度も何度も繰り返すことはもちろん大切である。ただし、闇雲に反復するのではムダが多くなりすぎる。私の方法を使うと、そのムダが明確になるので、これまでより少ない反復回数で同じ成果が出るのである。

それは、この方法が学習のポイントをついているからである。時間を見つけて他分野の学習にも役立てていきたいと思う。
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2011年01月23日

いろいろな例文の暗唱

中尾『英作文』をやっている最中ではあるのだが、ここ1週間ほどは例文学習の更なる効率化について、ノートの作り方も含めて、アーデモナイコーデモナイと工夫している。そのために、いろいろなタイプの例文を覚えてみた。以下はその報告。

@“Why should you worry about what others say?”(『英作文』p.166)

これは語句も構造も慣れたものだけなので、簡単に記憶できた。1週間経った現在でもスラスラ言える。

A“You may go to the movies on Sunday provided that you finish all your work by Saturday.”(『英作文』p.222)

これは@よりずっと長いが、構造図を描いたら簡単に再現できるようになった。1週間経った現在でもスラスラ言える。

B“Her father bequeathed her sundry curios.”(『究極の英単語 Vol.4』p.396)

文法的には簡単(単なるSVOO)だが、難しい単語が3つ含まれている(うち2つは初見)。試しに構造図を描いてみたら、2〜3回の音読で再現できるようになった。1週間経った現在でも正確に覚えている。新出の2語はまだ再現に手間取るので、それについては重点的なケアが必要だろう。

C“She deduced that the bacterial mutation was attributable to a certain digestive enzyme.”(『究極の英単語 Vol.4』p.118)

未知語の数が更に多く、構造もやや複雑でちょっと長い(13語)。しかし、経過はBと同様だった。構造図さえ描けば、このくらいの長さは問題にならないようだ。

ここで、単語だけいくつか覚えてみた。具体的には“subversion”, “overthrow”, “conspiracy”, “betrayal”, “espionage”, “sabotage”の6つ。(後藤守『留学の英単語』p.172)

意味的な関連はあるにしても、やはり例文という支えがないと覚えづらく感じる。ヒントがあれば思い出せるという程度にはすぐに達したが、それ以上は手間取りそうなので、今回はペンディングとした。

ここまでの例文と他数例を素材にして、ノートの作り方と使い方をいろいろ工夫してみた。それを5日くらいやって優劣の比較がだいたい完了したところで、極めつけというべき例文に挑戦した(昨日)。

D“It seemed likely that the waste buried in the drained swamps would contaminate the soil, but that information was withheld from area residents.”(『ALL IN ONE 4th Edition』p.180)

23語から成る、構造的にもそれなりに複雑な文。おまけに、知っていてもあまり馴染んでいない語句がいくつか含まれている。しかし、構造図を描いてみたら、最初の1回は失敗(単語1つ失念)したものの、2回目で暗唱できた。ただし、文の内容がややこしいので、ソラでやろうとすると、思い出すのに時間がかかる。不慣れな語句については尚更である。1週間後にどうなるかはまだ分からない。

ここまでの例からも分かるように、語句は単独で覚えるよりも、他の語句とのつながりを持たせた状態(特に文というかたち)のほうが覚えやすい。また、例文の理解と記憶に関しては、未知の語句が複数含まれている場合も含め、構造図の利用が非常に効果的である。

以上の実験を通して、例文学習を更に効率化する方法がほぼ固まったように思う。しばらくは『英作文』で実践を重ね、確信が持てた時点で詳細(今回はワザと伏せてある)を発表したいと考えている。

posted by 物好鬼 at 01:16| Comment(2) | TrackBack(0) | 例文そのものの学び方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年01月10日

長めの英文を自然に記憶してしまった

私は2年ほど前からFacebookに参加している。「友達」の大半は外国人なので、ほとんどのやりとりは英語である。気軽なやりとりは楽しいものだ。

さて、これは昨日のことなのだが、ある話題で数人の仲間とやりとりをしていた。英語学習者でもある私はいつも正確・適切な表現を心掛けているのだが、その中に80語強の書き込みがあった。

ところが、数分経ってその部分をリロードしてみると、なぜか表示されない。消えてしまった理由は分からなかったが、手元が狂って削除してしまったというわけではなかった。削除するには2クリック必要だからだ。

その瞬間は「せっかく時間かけて書いたのに!」と思ったが、消えてしまったものはしかたないので、気を取り直して再投稿することにした。

どうせなら全く同じ内容を書きたいと考えた私は元の投稿の文言を思い出そうとしてみたのだが、何と1語も違わず思い出すことができたのだ。それも何の苦もなく。

別に覚えようとしながら書いたわけではない。ただいつものように、一言一句について丁寧に、その正確さや適切さを何度も何度も確認しながら書いただけだ。しかし、それがよかったようだ。

結局、その後しばらくしたら先の投稿が表示されるようになったので、再投稿はしないままになった。表示されなかった理由はいまだに不明だが、予想外な形で貴重な経験をさせてもらったと思っている。同じやるなら「心を込める」こと、これは何事にも通じる秘訣なのだという次第。

※この点に関しては、拙著『例文学習の三段階』(上部のリンク参照)にある「自作例文による方法」という項も参照していただけると幸いである。
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2010年04月15日

超高速英作文

 「瞬間英作文」というのがある。有名な『英語上達完全マップ』に出てくるトレーニング法の一つである。

 著者のサイトで紹介されているトレーニング法は非常によくできたものである。個々のテーマもそうだが、何よりも全体構成が優れていると思う。今回取り上げる「瞬間英作文」は、今まさに私が取り組んでいるテーマであるが、書かれていることをそのまま踏襲するだけでは少し悔しいので、私なりに少し味付けをして実践している。

 それは何かというと、タイトルにも書いたように「超高速」である。つまり、音読するときも、リテンションするときも、そして和文から再現するときも、いつも早口言葉のように口を動かすのである。単なる「スラスラ」のレベルではなくフルスピードであるという点が重要である。

 具体的な方法としては、最初はややユックリめにスタートして、内容・構造についての理解と音声面の正確さとを確保するようにする。その状態で何度か反復してから、それらを崩さないように注意しながら加速していく。ほぼ上限に達したら、正確さに注意しながら10回反復し、次の文に移る。

 実際にやってみれば分かるが、処理速度を2〜3割アップするだけでも、頭に対する負担をかなり増やすことができる。正確さを維持しつつ加速するのはなかなか刺激的なことであり、知らず知らずのうちに没頭してしまうはずである。まさにゲーム感覚と言ってよい。

 また、嬉しいことに、文中に新語がある場合も直感的に覚えられるようである。もっとも、新語の数が増えてきたときにどうなるかは、これからの課題であるが。

 なお、音声面に自信がない人は、先に発音記号を一通りつぶしておくとよい(特に子音に関しては有声音と無声音をペアで理解すること)。各記号の具体例(ごく簡単な単語でよい)を丁寧に確認しておきさえすれば、あとは音読などの中で継続的に訓練することができる。

posted by 物好鬼 at 20:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 例文そのものの学び方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月03日

「音記」

 最近出た本の中に『リスニングの極意 音記』という本がある。同じ著者には『英会話の正体』『元祖!スピードスピーキング』が先にあって、『音記』はいわば第3弾にあたる。

 細かい部分まで検討したわけではないが、著者の主張は至極まっとうなものだと思う。特に「音記」は非常に大切なものだ。ちなみに「使えるセンテンスを音読し、口頭練習し、暗唱し、スピード・スピーキングの練習をすることによって、音声化された形で使えるセンテンスを記憶すること」(『音記』p.42)というのが著者による定義である。

 もっとも、これら3冊には「どうすれば応用できるようになるか」は書かれていないようだ。自然にできるようになる、ということなのかもしれない。だとすれば、國弘氏や種田氏に近い考え方ということになる。これはこれで否定するつもりはないが、別項にも書いたように、例文そのものを学ぶときに再措定的学習(既存の知識との間を演算によって接続する)を行い、例文そのものに慣れてきたら、語句の置換、転換そして96型ドリル等を通して応用変化のための演算を訓練していく…というようにすると、ヨリ効果的に学べるのではないかと私は思う。

 言うまでもないが、私としてはこれに構造図を併用するかたちで更に効果を高めたいと思っている。しかし、それでも著者の言う「最低でも100回口頭練習しないと、練習したことになりません」(『音記』p.56)は肝に銘じておきたい。でないと、頭でっかちな勉強法に逆戻りしてしまう可能性があるからだ。

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2008年05月05日

既存の例文学習法(2)

 (1)で紹介した方法では、文の構造についてあまりうるさく言われていないが、実は既存の方法の中にも文の構造を重視したものが存在している。以下でいくつかを紹介する。


◇チャンクによる方法

 ここでは、図式化のノウハウを含んでいる『チャンクで実践! あなたの英語』(奥田強、チクマ秀版社)を紹介する。

 同書では、チャンクを「メッセージの幹になるメインチャンクと動詞や名詞情報を詳しくするサブチャンク」(p.40)の2種類に分け、メインチャンクには5文型に対応した5種類があり、サブチャンクには副詞句(前置詞+名詞、to+動詞、動詞-ing、動詞-ed、副詞、名詞のまま)と形容詞句(前置詞+名詞、to+動詞、動詞-ing、動詞-ed、関係代名詞)があるとしている。もちろん、サブチャンクに対するサブチャンクも認めている。

 この学習法には「チャンク式記載」または「チャンク・チャート」というものが含まれている。その表記法の概要は
1.メインチャンクを箱で囲む。
2.サブチャンクは上または下に改行する。
3.(極力)発信順に、左から表記する。
4.サブチャンクからその修飾先に向かって矢印をつける。
のようなものであり(p.166)、「表記法の具体例」(pp.166-167)を見出しのみ紹介するならば
1.重文の記載は並列にする。
2.複文の記載
  a)副詞節はサブチャンクとする
  b)接続詞+動詞ing形は第2次のメインチャンクとする。
3.疑問代名詞の処理方法
4.例外的処理
  助動詞扱いにするもの
  仮主語の扱い
  仮目的語の扱い
  使役動詞、知覚動詞など特別用法の動詞はメインチャンク内に収納する。
となっている。

 なかなかよくできた方法ではあるが、この表記法では、サブチャンクの修飾先は親チャンク(メインチャンクあるいは親たるサブチャンク)への矢印で示されているだけである。一応「(極力)発信順に、左から表記する」というルールはあるものの、それほど徹底されたものではない。そのため、チャンクを結合して一つの(当然にして線形の)文として組み立てるときに、サブチャンクを親チャンクのどこに挿入すべきかが分かりにくいという問題がある。

 また、名詞節がサブチャンクとして扱えないことも問題である。この制限があるせいで、かなり長い名詞節を含んだチャンクが生じてしまうことがあるからである(p.59にbelieveでの実例がある)。これでは、せっかくのチャンク化も十分な効果を発揮しないであろう。


◇センテンス・フロー

 これは『クリエイティブ・ラーニングによる 実戦!超記憶術』(高見忠、KKベストセラーズ)で紹介されているものである。p.187にはこうある。
 書き方は、まず必ず英単語の下に、日本語を書きます。名詞や副詞などにあまり惑わされずに、文節ごとに四角で囲みます。動詞は重要です。前述したように、動詞とは「走る、行く、書く」などの動作、作用、存在などを表し、物や人の状態を変化させる言葉です。動詞は矢印で示してください。最後に句や節ごとに四角で囲みます。
 ここには具体例の引用はしないが、これは非常にユニークな方法であり、特に、文の構造を考慮したイメージ化となっている点が評価できる。(cf. 著者のサイト

 欠点としては、やや手間が掛かることと、文の構造によっては枠線が3重にも4重にもなってしまうことが挙げられよう。後者に関しては、縦方向のレイアウトに工夫をこらすことで、もっと見やすくすることができる。


◇例文の再措定的学習法

 これは、作文力養成に役立てるために私自身が数年前に考案したものである。基本的な手順を、『TOEICテスト速習本D 600点レベル』p.151の第1例を使って説明する。

 元の文は“When I took this office space, it’d been vacant for more than three years.”である。このとき従属節は

  I take this office space.
   ↓過去に
  I took this office space.
   ↓whenに導かれる節に
  when I took this office space

のように生成される。また、主節は

  It’s vacant.
   ↓現在完了に
  It’s been vacant.
   ↓+3年以上
  It’s been vacant for more than three years.

のように生成される。そして両者が結合されて(同時に「時制の一致」が行われて)元の文となる。

※詳細はこちらを御覧いただきたい。

 文法的なルールを分かりやすく説明し、優れた例文をも紹介してくれる教材はたくさんあるが、それらのテキストに掲載されている例文のほとんどは、文法的なルールを適用した結果としての文である。しかし、適用の<過程>を習得するためには、まずはその適用過程自体を一種の<演算>として意識にのぼらせ、それを何度も何度も自力で辿ってみることが不可欠なはずである。そこで上述のような「再措定」が役に立つわけである。ただし、もっと分かりやすく図式化した方が、構造についてのヨリ明確な認識につながるであろう。

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既存の例文学習法(1)

◇音読カード

 例えば『TOEICテスト600点突破! 音読カード』(太田信雄、第三書房)などがある。同書による方法は次の通り(pp.9-12)。
1.リスニング
2.音読
3.日本語から英語をパッと呼び出す
4.音読筆写
 特にこのうちの「日本語から英語をパッと呼び出す」を3000回繰り返すよう勧めている。

 これは非常にストレートで、好感が持てる。ただ、文構造に対する認識をもっと意図的に育てるようにしないと、期待したほどの応用力は身に付かないであろう。


◇80回音読

 言わずと知れた市橋敬三氏の方法である。今や古典となった『必ずものになる話すための英文法』シリーズ(研究社出版)など、氏による多数の書籍で紹介されている(詳細にはバラツキがあるようであるが)。ここでは『TOEIC TEST目標点数を必ずとりにいく。スコア330点レベル』(ビジネス社、「和→英」タイプ)から、「本書の効果的学習法」(pp.7-8)を紹介する。
@本書の和文英訳のヒントを見ながらノートに書くこと。
Aヒントを見てもよく分からないときは英文を和訳する練習をすること。その際、ヒントを見ないで挑戦してみよう。考えても意味が推測できないときは、ヒントを見て英文和訳に挑戦しよう。
B(中略)文法の各項目を終了したら、各項目約5文の中の1番気に入った文を音読して、最終的には暗記してしまうことを勧めたい。音読回数は1文最低80回である。この際、精神を統一して、黙読ではなく音読することが不可欠であることは言うまでもない。
 これも上記「音読カード」方式と似たものである。教材が文法項目別になっているので、「音読カード」よりは応用につながりやすいと思われるが、文構造についてはもっと明確に意識しながら学習した方が効果的であろう。


◇リテンション

 文単位で記憶し、再現する訓練のことである。通訳訓練においては、一読あるいは一聴しただけの文をただちに正確に再現する訓練(オーラル・ディクテーション)のことを意味する(通訳訓練の用語は必ずしも一定していないので注意が必要である)。覚え方そのものに特別なノウハウがあるというわけではない。

 後者の場合、読んだり聴いたりした瞬間にその文の構造を正確に把握できなくてはならないわけであるから、文構造についての学習がやや先行している必要があろう。


◇サイト・トランスレーション

 通称「サイトラ」。書かれた和文を口頭で英訳する訓練のことである。既得の英文を再現するだけの場合と、初見の英文で応用力を発揮する場合とがある。後者の方がはるかに高い能力を必要とするし、そもそも例文記憶の枠内に収まらない。


◇十指法(じゅっしほう)

 これは『和魂英才 英語超独学法』(吉ゆうそう、南雲堂)で紹介されているもので、以下のような手順をとる(p.74)。
@英文をじっくり黙読し、意味を理解する。
A英文から目を離し、スラスラ正しく言えたら、指を1本折る。
B英文をそらで言い続け、10本指折りしたら終了。
C次の英文に移り、@ABを繰り返す。
 要するに、リテンションの一種であるが、「10回成功するまでやる」というのが明快で、実行しやすい。

 これに似たものとしては、『いつでもやる気の英語勉強法』(三宅裕之、日本実業出版社)に
 暗記の際には、10回音読をしてから、さらに英文を見ないで5回連続で言ってみます。5回連続でつっかえずに言えたら合格。つっかえてしまったら最初から数え直しの「5カウントノックアウトルール」でやりましょう。
というのが紹介されている(p.87)。先に音読すべきことをルール化している点が目を引く(次の段階で類例の自作も行うことになっている)。

 いずれにしても、各例文の構造をもっと明確に意識させるような工夫が欲しいところである。


◇穴埋め記憶法

 これは『最強の英語「記憶」学習法』(宮野晃、日本実業出版社)で紹介されている英文記憶法であり、次のような手順で学習する(p.77)。
@英文を何度か口頭で言う(手で書くプロセスを加えてもよい)
A次のその英文のポイントとなる単語を指で隠して、英文を繰り返して口に出して暗記を試みる。
B最後に、日本文を見て、英文がスラスラ口に出てくるかをチェックする。
 「ポイントとなる単語を指で隠して」というのがユニークである。適当な「中心」を設定することで、記憶への残り方が違ってくるのであろう。ただし、各例文の構造をもっと明確に意識させるような方法が組み込まれていれば、ヨリ効果的なものとなるのではないかと思われる。


◇自作例文による方法

 『ちょっとした外国語の覚え方』(新名美次、講談社)には、例文暗記について説明した直後(p.77)に、
加えて、大人の場合、新しい単語やイディオムは、普段自分が使っている日本語のレベルくらいの長文を作り、暗記する作業を繰り返す。これは知的な刺激にもなり、即、実践につながることは言うまでもない。
とある。また、シュリーマン『古代への情熱』(村田数之亮訳、岩波文庫)の有名な一節(p.24)には次のように書かれている。
…つねに興味ある対象について作文を書くこと、これを教師の指導によって訂正すること、前日直されたものを暗記して、つぎの時間に暗唱すること
 このように、自分自身の必要性などに合った例文を自分の力で作成して記憶することは、教材から得たいわば天下り的な知識を、自分に密着したものへと転化するための優れた方法である。なお、シュリーマンのように指導者の援助が得られれば、正確さを犠牲にしてしまう危険を避けることができる。


◇只管朗読

 『國弘流英語の話しかた』(國弘正雄、たちばな出版)などで紹介されている方法である。著者は言わずと知れた「同時通訳の神様」である。

 これは非常に堅実な方法である。素材の選択・集中という意味では、例文記憶による方法に一歩劣るとも言えるが、文章の音読を好む人にとっては、単なる例文の集合体よりも効果的に学べる可能性もある。長短を知った上で選択すればよいであろう。もちろん、まとまった文章として音読する一方で、そこから重要な例文を抜き出して重点的に学ぶ、という複合的な方法でもよい。

 音読においては、@各文が伝えようとしているポイントを明確に意識することと、Aできるだけ感情移入して読むこと(さも「自分自身が」「今」発信しているかのように読むこと)の2点が大事である。単に「正確な音声でスラスラ読める」というだけでは、頭の中の言語的な活動が十分に行われないため、見かけほどには実際的な能力が高まらないであろう。もちろん、音読と並行して、実際に自分の言葉で発信する機会を増やしていくことも、必要かつ重要である。


◇瞬間英作文

 これは『英語上達完全マップ』(森沢洋介、ベレ出版)において提唱されているものである。

 学習の手順については、「ステージ分け」や「サイクル回し」などの工夫が見られ、かなりよくできた方法であると思われるが、例文の活かし方としては特別なものではない。これまでに見てきたいくつかの方法と同様、例文が持つ構造や、その背後にあるルールについてもっと明確に意識するプロセスを含めれば、更に効果的な方法となるであろう。

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例文習得の必要性・有用性

 作文力の養成を図るために数百の例文を記憶することが古くから行われている。例えば現在でも根強い人気を誇る古典的教材として『和文英訳の修業』(佐々木高政、文建書房)がある。著者はこの本の初版「はしがき」(1952年)で、
根気よくこれをくり返しくり返し読んでいただきたい。日本文をチラッと見て英文が一息にスラスラと言えるまでに自らを訓練するのである。そうしてしばらくするとその文例は次第に消化されて自分のものとなり、時に応じて英語が口を突き、指先にうずくようになる、すなわち応用ができる段階に到達する。
と述べている。これが真実であることは、この書で学んだ種田輝豊氏が『20カ国語ペラペラ』(実業之日本社、絶版)の中で
 まず、英文の方をふせて、日本分を自分で口頭で英語にしてみる。それから、英語のほうをチェックする。作文には自信があっても、ともかく、その本を、考えることなくスラスラいえるようになるまで、繰り返し繰り返し練習した。はじめて見るような単語は、全部を通して一つもなかったが、知っていて使えずにいた単語に生命力を与えてくれた点で、この本は、はかりしれないほど役に立った。
 ……暗記用の五百の文例は、すべて習得し、日本語の部分を見てすぐ英語がでてくるようになっていたうえ、それらの暗記した文が、常時、混乱したエコーのように頭の中で聞こえるようになった。
 わたしがこれまで、多国語を話せるようになった経験からいって、最良の方法と信じているのは、基礎的な文章を丸暗記してしまうことである。
(中略)
 章句を暗記していれば、組み立ての苦労なしにそっくりレディ・メードを実用に供することができる。しかも五百の章句で、たいていの表現はまにあわすことができるのである。多少のおきかえの機転がきけば、まず、こまることは少ない、といっても過言ではない。
と述べている(順にp.66、p.82、pp.184-185)ことからも明らかであるし、同じような実践で成果を上げた人は他にも多数存在するようである。例えば、『ちょっとした外国語の覚え方』(新名美次、講談社)には、
 使えるボキャブラリーは、フレーズの中に存在するのである。したがって、何故私が、例文と共に単語を覚えてきたかがおわかりになるだろう。このほうが、単語やイディオムの使い方が理解でき、即実践に使えるようになるからだ。
とある(p.75)。この人には『40ヵ国語習得法』(講談社)という著書もある。

 さて、このような状況のもと、高校生向きのものも含め、多数の例文集がさまざまな出版社から発行されてきている。例文集という形式でなくても、優れた例文を多数掲載した教材は少なくない。例えばこれは英作文教材であるが、やや古典的な名著として『基礎と演習 英作文』(中尾清秋、数研出版)がある。著者は「本書の構成と使用法」において次のように述べている(pp.5-6)。
2.本書の使用法について
 各章のはじめにあるExamplesを何度も読んで、出来れば全部暗記してしまうこと。
 解説や注意をよく読み、文法の規則を徹底的に理解すること。
a 例題
 ……
b EXERCISES
 ……そして出来れば与えられている解答を全部暗記してしまうことである。……
c 実力問題
 ……そして最後に実力問題の解答を出来れば全部暗記してもらいたいのである。
 また、本書には随所にTo Memorizeとして重要語句を含む短文が掲げてあるが、これは文字通りmemorize(暗記)して頂きたい。
 こう書いてくると、本書は暗記することばかりではないかと諸君は言うかも知れない。正にその通り、暗記すべきことばかりである。英語は99パーセント暗記ものだと言った人がいる。それはウソである。英語は私に言わせるならば100パーセント暗記ものなのである。
 例文を記憶することは、これほどまでに重要かつ有用なことなのである。とはいうものの、それは実際に記憶できてこその話であるのも事実である。受験生などの中にはたかが500や700の英文ですら「そんなにたくさん覚えられるわけがない」と諦めてしまう者が少なくないようであるが、そこまで弱気になってしまうと、英語の習得など夢のまた夢であろう。

 項を改めて、既存の例文習得法をいくつか取り上げて検討したい。

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2006年11月05日

森を覚えて木を忘れ(例文暗記の問題点)

 例文暗記、特に「和文をちらっと見ただけで英文が言えるようにする」という学習がよく行われている。それは別に悪いことではない。必要なことですらある。しかし…

 実はこの方法には落とし穴がある。あるいは盲点というべきか。ちょっと書いてみたい。

 唐突ではあるが、皆さんは十二支がスラスラと言えるだろうか。仮に言えるとして、「巳(み)年の次は?」といった問いに即答できるだろうか。大半の人は「ええっとぉ、ねぇ・うし・とら・うぅ・たつ・みぃ・うま…、あっ、午(うま)年だ!」となるはずだ。いきなり「みぃ・うま」と言える人は少ないと思う。アルファベットの順番なら何とかなるという人でも、イロハで同じことをするのは難しいだろう。

 同じことは英文についても言える。つまり、単に例文を丸暗記しただけだと、大抵は頭から思い出すことしかできないということだ。決まり文句ならそれでもいいのだが、そうでない場合には、せっかく覚えた例文があまり役立たないという現実に直面することになる。そして残念なことに、素材の大半は決まり文句ではない。まあ、読み書きなら考える時間があるからまだ何とかなるとしても、会話(特に「話す」)ではイライラするくらい役立たないはずだ。これではスムーズな会話など到底無理だ。
(ここでは個々の英文とその内部の要素との関係について述べているのだが、文章と個々の文との間についても同様のことが言える。理屈は同じなので割愛する。)

 ではどうしたらよいのか? まず何よりも、途中のどこからでも自由自在に思い出せるようになるまで徹底的に覚えることが必要だ。もちろん全ての素材についてそのような勉強をする必要はないが、少なくとも自分にとって「核」となる素材(例えば基本書の例文など)についてはこの種の努力をすべきだろう。

 しかし、これはあくまでも必要条件であって、決して十分条件ではない。つまり、単に徹底的に覚えるだけでは、思ったほど自由には使いこなせない。というのは、往々にして、形を変えて使う必要が生ずるからだ。例文暗記という方法について賛否両論が存在するのは、そんなところに理由がある。これは「文を覚えたかどうか」という表面的なことだけではなく、「そのときに頭の中で何が行われているか」「どのような作業を可能とするような学習が行われているか」に着目しないと、正しい判断はできないであろう。

 では、その「頭の中の何か」のために何を為すべきかだが、それは「文」というものを「その内部に構造を持ったもの」として認識し、習得する作業である。そのためには別記の「再措定的学習」が有効だ。また、語句の置換や各種の文法ドリルを行うことによって、様々な使い方(組み立て方)に習熟することができる。もちろんもっと自由な試行錯誤も有効ではあるし不可欠でもあるが、同時にその危険性も認識しておく必要があろう。


参照)一覧用ページ
posted by 物好鬼 at 22:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 例文そのものの学び方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月17日

例文の再措定的学習法

 これは、例文学習の前段として行うべきものである。

 例文学習においては、まずその例文を「理解する」ことが重要だと言われるが、何をどうすれば理解したことになるのかが分かりにくいという問題がある。
 そこで次のような手順を踏む。これは「学ぼうとしている例文と既得の事項とを、言語演算規則を媒介にして関連づける作業」である。

 仮に習得したい例文が、

例文 私がこの事務所に決めたとき、3年以上空いていたんです。
When I took this office space, it'd been vacant for more than three years.
テーマ 過去完了「継続」

であれば(『600点レベル』p.151の第1例)、

(1) 私はこの事務所に決める。 I take this office space.
(2) ⇒決めました。(過去)
 私はこの事務所に決めました。
I took this office space.
(3) それは空いています。 It 's vacant.
(4) ⇒3年以上(現在完了)
 (それは)3年以上空いています。
It 's been vacant for more than three years.
(5) ⇒(2)のとき(4)(複文、過去完了)
 私がこの事務所に決めたとき、
 3年以上空いていたんです。
When I took this office space,
it 'd been vacant for more than three years.

のようにして構成の手順を辿ったほうが、既得事項との関連性が明確になる分、新しい例文が学びやすくなるはずである。
(もちろん、(1)→(2)→(5)←(4)←(3) である。)

 念のため述べておけば、例文暗唱において大切なのは、同じような形式の結果を自力で出せるようにすることであり、具体例そのものを覚えることではない。である以上、そのような結果が出てくるまでの<過程>を反復し習得することこそが大切なのだということを認識する必要がある。

 なお、当然のことながら、例文をどこまで分解・単純化するかは、あくまでも各自の必要性を基準にして決めることになる。「各自の必要性」については、「口頭でスムーズに処理できるか」で判断するのがよいであろう。

 同じ単元にある他の4つの文も同様にやってみよう。

(1) 私はこの仕事につきます。 I get this job.
(2) ⇒先週(過去)
 私は先週この仕事につきました。
I got this job last week.
(3) 私は失業しています。 I 'm unemployed.
(4) ⇒2年近く(現在完了)
 私は2年近く失業しています。
I 've been unemployed for nearly two years.
(5) ⇒(2)のとき(4)(複文、過去完了)
 私は先週この仕事についたとき、
 2年近く失業していました。
When I got this job last week,
I 'd been unemployed for nearly two years.

(1) 私達は結婚します。 We get married.
(2) ⇒先週(過去)
 私達は先週結婚しました。
We got married last week.
(3) 私達はお互いに知(り合)っている。 We know each other.
(4) ⇒10年近く(現在完了)
 私達はお互いに10年近く知(り合)っています。
We 've known each other for almost ten years.
(5) ⇒(2)。(4)。(過去完了)
 私達は先週結婚しました。
 私達はお互いに10年近く知り合っていました。
We got married last week.
We 'd known each other for almost ten years.

(1) 私はこの生地屋を始めます。 I start this fabric store.
(2) ⇒先月(過去)
 私は先月この生地屋を始めました。
I started this fabric store last month.
(3) 私は衣料品産業についています。 I 'm in the apparel industry.
(4) ⇒20年以上(現在完了)
 私は20年以上衣料品産業についています。
I 've been in the apparel industry for more than twenty years.
(5) ⇒(2)。(4)。(過去完了)
 私は先月この生地屋を始めたんです。
 私は20年以上衣料品産業についていました。
I started this fabric store last month.
I 'd been in the apparel industry for more than twenty years.
  ('month' 直後の '.' は実際には ',' となっているが、ここでは日本語に合わせて '.' とした。)

(1) 私達はこの家を買います。 We buy this house.
(2) ⇒昨年(過去)
 私達は昨年この家を買いました。
We bought this house last year.
(3) 私達は小さいアパートに住んでいます。 We live in a small apartment.
(4) ⇒約10年(現在完了)
 私達は約10年小さいアパートに住んでいます。
We 've lived in a small apartment for about ten years.
(5) ⇒(2)。(4)。(過去完了)
 私達は昨年この家を買ったんです。
 約10年小さいアパートに住んでいたんです。
We bought this house last year.
We 'd lived in a small apartment for about ten years.


 なお、全ての例文について(1)や(3)(素材文と呼ぶ)を書き出すのが大変な場合は、次のようなルールにもとづいてマーキングするだけで済ませることも可能であろう。

  ・最終的な変更箇所は太字で示す(手書きの場合は○で囲む)
  ・その前の段階の変更箇所は下線で示す
  ・副詞節と形容詞節は( )で、名詞節は[ ]で、それぞれ囲む
  ・文の区切りには / を入れる

これにより具体的には、

(私がこの事務所に決めとき、)3年以上空いていんです。
When I took this office space,) it'd been vacant for more than three years.
(私は先週この仕事についとき、)2年近く失業していまし
When I got this job last week,) I'd been unemployed for nearly two years.
私達は先週結婚しまし。/私達はお互いに10年近く知り合っていまし
We got married last week. /We'd known each other for almost ten years.
私は先月この生地屋を始めんです。/私は20年以上衣料品産業についていまし
I started this fabric store last month. /I'd been in the apparel industry for more than twenty years.
私達は昨年この家を買っんです。/約10年小さいアパートに住んでいんです。
We bought this house last year. /We'd lived in a small apartment for about ten years.

のように処理できる。
posted by 物好鬼 at 22:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 例文そのものの学び方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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