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2008年05月05日

単語集か多読か?

 これはよく議論されるところではあるが、それぞれに長所・短所があるので、それをよく知った上で使い分けるべきである。一方を偏重するあまり他方を必要以上に見下すのは、あまり賢明な態度とは言えない。

 まず、「多読だけでは十分な数の語彙に出会うのに時間がかかりすぎる」という意見がある。だから独立したボキャビルが必要だ、というわけである。しかし、新語(=未知の語)に出会う頻度がそんなに低いのであれば、その都度辞書を引けば済むのではないか? 通訳の場合は辞書を引くことが難しいであろうが、要は各人の必要性の問題である。むりやり語彙力を増強しようとするくらいなら、そのエネルギーを何かもっと内容的な学習に使った方がよいように私には思える。それ以上に力を入れるのは、(もちろん個人の自由ではあるが)あくまでも趣味の領域である。

 しかし、上の「その都度辞書を引けば済む」という考えに対しては、例えば「辞書を引きながら洋書を読むのは面白くない」といった反論があるであろう。たしかに辞書を引くことで話の腰を折られるのは楽しいことではないから、その頻度は低ければ低いほどよい。しかし、単語集や辞書によるボキャビルというのは、その「面白くない」作業を先に集中してやっているだけでしかないということは指摘しておきたい。はたしてわざわざ覚える必要があるのか分からない、あるいはそもそも一生のうちに出会うことすらあるのかどうかも分からないようなレベルの語句については、本当に学習する必要があるのかどうか再検討すべきであろう。限られた時間を無駄にしすぎないことは大切である。

 また、健全な学習には、内容についての興味や問題意識といったものが重要であることも指摘しておきたい。これは単語集(テーマ別でないもの)や辞書を頭から覚えていく場合に問題となる。各学習者は具体的な個性と環境を持った生身の人間なのであるから、将来の<自分>にとって必要かどうかも分からない語句を、内容的な関連から切り離されたかたちで学び続けるというのは、頭脳の働きに適合した学習方法とは言えないであろう。その意味からは、与えられた素材をそのまま使うのではなく、少しでも自分向けに整理しなおすといった取り組みを忘れるべきではない。

 ところで、最近はコーパスの意義について言及されることが多いが、辞書等における語句の選択がどんなに<正確>だとしても、それはあくまでも<平均>的なものでしかないという点に注意が必要である。それに対して各人は大なり小なり偏った世界に生きているのであるから、基本を超えた段階において平均的な像にこだわりすぎるのはあまり現実的ではない。また、辞書に盛られている情報はあくまでも辞書のために切り出されてきたものであって、もはや具体的な文脈に置かれてはいない。単語集や辞書による集中的なボキャビルは非常に効果的ではあるが、本当の意味での習得には具体的な文脈に置かれたナマの素材を通して学ぶことが不可欠である。どんな優れた辞書・単語集であっても、以上のような限界を認識したうえで活用すべきである。

 なお、何か特定の分野について一通りの語彙を習得したいのであれば、その分野の教科書とか百科事典(Wikipediaも含めて)を利用するのが手っ取り早いのではないかと思う。なぜならば、必要な語彙に、それも具体的な文脈の中で出会うことができるだけでなく、その分野の内容についても理解できるからである。幅広い語彙が必要であれば、体系的に編まれた百科事典が最も役に立つであろう。いずれの場合も、和訳が併記してあれば辞書で確認する手間が省ける。問題意識があるテーマについては、そういった素材を最大限活用したいものである。

 結局のところ、

  @内容・場面、語源、語法などのテーマで整理され、テーマごとに
    ・語彙リスト(反復学習しやすい体裁のもの)
    ・文章(自然な実例となっているもの、音声付きが望ましい)
    の双方が掲載されている教材を準備する。
  Aその教材を強い興味・問題意識を持ちながら学習する。
  B知識のモレや間違いを防ぐために、辞書や頻度順単語集などを併用する。
  C既存の教材を、自分本位の教材に作り替えていく。

というのが最良の選択であろう。上記@を満たす包括的な教材が存在しない以上、BCの比重が大きくなることは否めないが、それは学習者としての主体性を発揮するまたとないチャンスであると考えればよい。


posted by 物好鬼 at 16:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 学習素材間の関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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