根気よくこれをくり返しくり返し読んでいただきたい。日本文をチラッと見て英文が一息にスラスラと言えるまでに自らを訓練するのである。そうしてしばらくするとその文例は次第に消化されて自分のものとなり、時に応じて英語が口を突き、指先にうずくようになる、すなわち応用ができる段階に到達する。と述べている。これが真実であることは、この書で学んだ種田輝豊氏が『20カ国語ペラペラ』(実業之日本社、絶版)の中で
まず、英文の方をふせて、日本分を自分で口頭で英語にしてみる。それから、英語のほうをチェックする。作文には自信があっても、ともかく、その本を、考えることなくスラスラいえるようになるまで、繰り返し繰り返し練習した。はじめて見るような単語は、全部を通して一つもなかったが、知っていて使えずにいた単語に生命力を与えてくれた点で、この本は、はかりしれないほど役に立った。
……暗記用の五百の文例は、すべて習得し、日本語の部分を見てすぐ英語がでてくるようになっていたうえ、それらの暗記した文が、常時、混乱したエコーのように頭の中で聞こえるようになった。
わたしがこれまで、多国語を話せるようになった経験からいって、最良の方法と信じているのは、基礎的な文章を丸暗記してしまうことである。と述べている(順にp.66、p.82、pp.184-185)ことからも明らかであるし、同じような実践で成果を上げた人は他にも多数存在するようである。例えば、『ちょっとした外国語の覚え方』(新名美次、講談社)には、
(中略)
章句を暗記していれば、組み立ての苦労なしにそっくりレディ・メードを実用に供することができる。しかも五百の章句で、たいていの表現はまにあわすことができるのである。多少のおきかえの機転がきけば、まず、こまることは少ない、といっても過言ではない。
使えるボキャブラリーは、フレーズの中に存在するのである。したがって、何故私が、例文と共に単語を覚えてきたかがおわかりになるだろう。このほうが、単語やイディオムの使い方が理解でき、即実践に使えるようになるからだ。とある(p.75)。この人には『40ヵ国語習得法』(講談社)という著書もある。
さて、このような状況のもと、高校生向きのものも含め、多数の例文集がさまざまな出版社から発行されてきている。例文集という形式でなくても、優れた例文を多数掲載した教材は少なくない。例えばこれは英作文教材であるが、やや古典的な名著として『基礎と演習 英作文』(中尾清秋、数研出版)がある。著者は「本書の構成と使用法」において次のように述べている(pp.5-6)。
2.本書の使用法について例文を記憶することは、これほどまでに重要かつ有用なことなのである。とはいうものの、それは実際に記憶できてこその話であるのも事実である。受験生などの中にはたかが500や700の英文ですら「そんなにたくさん覚えられるわけがない」と諦めてしまう者が少なくないようであるが、そこまで弱気になってしまうと、英語の習得など夢のまた夢であろう。
各章のはじめにあるExamplesを何度も読んで、出来れば全部暗記してしまうこと。
解説や注意をよく読み、文法の規則を徹底的に理解すること。
a 例題
……
b EXERCISES
……そして出来れば与えられている解答を全部暗記してしまうことである。……
c 実力問題
……そして最後に実力問題の解答を出来れば全部暗記してもらいたいのである。
また、本書には随所にTo Memorizeとして重要語句を含む短文が掲げてあるが、これは文字通りmemorize(暗記)して頂きたい。
こう書いてくると、本書は暗記することばかりではないかと諸君は言うかも知れない。正にその通り、暗記すべきことばかりである。英語は99パーセント暗記ものだと言った人がいる。それはウソである。英語は私に言わせるならば100パーセント暗記ものなのである。
項を改めて、既存の例文習得法をいくつか取り上げて検討したい。