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2017年01月15日

音声表象操作について私見を少々

私は91年はじめに提出した卒論で「なおここで『外国語で考える』とは、外国語の単語の(音声)表象を原則的には文法に則った形で頭の中に並べることによって概念の運用をすること、である」と記したのだが、以下はそれを敷衍したものでもある。拙い私見ではあるが、少しでも参考になれば幸いに思う。

我々はものを考えるとき、単語の音声表象を(原則的には文法に則った形で)頭の中に並べることによって概念の運用をすることが多い。そしてこの音声表象操作は、聞いたり話したりするときはもちろん、文章を書いたり読んだりするときにも使われている。その必要性は、複雑高度な素材で特に高くなろう。

このことは外国語の場合にも当てはまる。だからもしその言語を話す機会がゼロに近いとしても、それを理由に「その言語の音声表象操作能力は不要だ」とは言えないことになる。むしろこれを訓練しておかないと、暗号解読的な処理から抜け切れず、処理の正確さやスピードが改善しにくくなる可能性が高い。

音声表象操作について私は三浦つとむの理論を基礎にしているが、さらに種田輝豊が『20ヵ国語ペラペラ』で力説した「望まれる、片寄りのしない勉強方法──これは結局、読解力と作文力の間の実力の差ができるだけ小さくなるような方法で勉強することである」という考えからも大きな影響を受けている。

ところで、この音声表象操作はいわゆる「話す」と同じなのか? 答えは否であって、それには2面がある。まず、音声表象操作には音声化(広い意味での発音)の能力はほとんど要求されないという点が指摘できる。つまり、実際に話す際には、音声表象操作能力以外に音声化能力も要求されるということだ。

ならば、「話す=音声表象操作+音声化」なのか? これは「話す訓練をすれば足りるのか?」とも言い換えられるが、それは初級段階ではそのとおりであっても、その後は徐々に状況が変わる。なぜならば、音声表象操作というものは、複雑高度な文章を書いたり読んだりする際にも大いに活用されるからだ。

つまり、音声表象操作の対象となるものは「話す」文体のものに限られないのであり、かつて入試の長文問題に好んで使われたような硬い文体の英文を「語り」練習の素材として利用することも可能である。もちろん実用に供する際にはスピーチレベルに注意すべきだが、それは日本語についても言えることだ。

また、我々は母語を持った学習者だから、訳したり文法的に分析することで母語との緻密な対比を行うことは有用だ。それは「英文を直接理解する代わりに日本語に訳してそれを理解することですませる」といった意味ではなく、直接の処理を可能とするための補助として使用することが優先されるべきだろう。

さらに、学校では英語は国語や数学などと並んで主教科の一つとされているのだから、実用性という面だけでなく、知的関心などの面も重要と考えられる。英語が言語である以上、文法は当然として、発音や語源などについても充分に学ばせたい。ただし、他教科とのバランスや総量などは考慮する必要がある。

念のためだが、私はすべての思考に音声表象が必須だとまでは言っていない。三浦も「人間の思惟は必ずしも言語からみちびかれた感性的な手がかりによって行われるわけではない。画家はいわば絵画的に思惟するものである」と第二部p.425で記しており、ゆえに私も最初に「ことが多い」と書いている。

英検受験者としての蛇足)英作文においてはテーマに関する知識の有無が出来をかなり左右する。これは「実用」的ではあるが、英語力の測定という点からは大きなノイズだろう。改善策としては、「2次試験のように選択制にする」「論述に必要な背景情報を別途提示する」といった方法が考えられると思う。

(すべて140字)

※この程度の文章を書くにも3時間以上かかるのが私の現状。
※上記「第二部」とは三浦つとむ『認識と言語の理論』の第二部。その
  「第二章 言語表現の二重性」の「五 概念の要求する矛盾」や
  「第三章 言語表現の過程的構造(その一)」の「四 『内語』説と第二信号系理論」
 などを参照されたい。
※種田からの引用は改訂版(昭和48年)p.161より。

posted by 物好鬼 at 09:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 語学の本質 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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