しかし、この本は「練習するほどに下手になる」場合があることをきちんと押さえていることに気付いたので、ものは試しに購入してみた。少し読んでみたところ思った以上によさそうだったので数日後には原書を買い、さらにその数日後にはオーディオブックも購入した。上達論について英語で語れるようになりたいという深謀遠慮があることは内緒だ。
さて、問題の「練習するほどに下手になる」の件だが、原書版の p.xii(推薦のことばの一部)に
As Michael Jordan said, "You can practice shooting eight hours a day, but if your technique is wrong, then all you become is very good at shooting the wrong way."
という部分がある。理解するのに困難はないと思うが、問題は途中に出てくる 'all' の品詞だ。直後に隠れている関係詞の品詞と言ってもよい。
簡単な例で言えば、もし
You need money. (SVO)
という文があったとき、「アナタが必要とするものはそれ以外にはない」というのであれば、「アナタが必要としているものとして考えられるものの全て」を 'all' として前に出し、
All you need is money.
と書けるだろう。
また、もし
You become a poor actor. (SVC で C が名詞)
という文があったとき、「アナタがなるものはそれ以外にはない」というのであれば、「アナタがなるものとして考えられるものの全て」を 'all' として前に出し、
All you become is a poor actor.
と(おそらく)書けるだろう。
それと同様に、もし
You become (very) good (at ○○). (SVC で C が叙述形容詞)
という文があったとき、「アナタがなるものはそれ以外にない」というのであれば、「アナタがなる状態として考えられるものの全て」を 'all' として前に出し、
All you become is (very) good (at ○○).
と書けるだろうし、正に上の引用がその一例である。
しかし、だ。最初の2例の先行詞 'all' は 'a poor actor' や 'money' に由来するものだから名詞と考えられるが、3例目の 'all' はどうか?
これは '(very) good (at ○○)' に由来するものだから叙述形容詞であるとしか考えられない。そして 'all' と 'you' の間に隠れている関係詞(書くとすれば 'that' であろうか)も同じ品詞であるはずだから、関係叙述形容詞だということになろう。そしてこの例ではそれが表示されていないので、ゼロ関係叙述形容詞ということになるはずだ。
…と私には思われるのだが、英語学の世界ではどう扱われているのだろうか?
追記:関係副詞の先行詞は名詞だから、上の場合の 'all' もそれと同様に名詞でかまわない、という考え方もありうるのかもしれないが、関係詞の部分が叙述形容詞であるということに変わりはないように思われる。