(リンク先で中身を閲覧することができる。)
発売から1ヶ月以上経過しており、なかなかよい教材だということは複数の人から聞いていた。私は一昨日になってようやく入手し、昨日の昼休みに最初の部分を CD 音声を聴きながら読んでみた。
裏表紙側のカバーには
【本書の学習プロセス】
STEP 1 スロースピード・トレーニング
STEP 2 英文の文法解析
STEP 3 スラッシュ音読
STEP 4 シャドーイングで反復練習
と書かれている(小さい文字の部分は割愛した)。
まず、巻頭には文型+αについてコンパクトな解説がある。内容的には拙著『英文構造図』のTとUに相当するものだが、そのうちの本当に重要なところを無駄なくまとめている。ただし、文字のみでの解説である点は、従来からある多くの教材と変わらない。
本文は全部で30のチャプターからなっている。とりあげられている文章は分量的には多いとは言えないが、厳選された素材(後述するように意外とレベルが高い)を繰り返し利用してステップアップできる点が優れている。ここ最近の私が「こういう本があったらいいなあ」と思っていたものに近い。
各チャプターの解説も無難に仕上がっている。ただ、語句には(注意すべきものだけでも)発音記号があるとよかったと思う。音読のための重要情報だから。
文法解析は本書のキモの一つだろう。これは巻頭の文型解説と同様、私の構造図を使った方がわかりやすい(手前味噌ではあるが)。この点はこのすぐ後で詳説する。
ナレーションもよく、音声については文句なし。ただ、語句欄が「Words & Sentences」という見出しになっている理由は、私にはよくわからない。
さて、チャプター1の例文は
We must repair the damage which we have already done by preserving large areas of wilderness and giving the animals and birds that live there the right to exist.
というもの。「初級コース」の最初の課題にしてはなかなか骨があると思う(最終目標はどのくらいのレベルなんだろうか)。これを構造図で表すと次のようになる。
原文中には6つの動詞があるが、最後のもの以外に@〜Dの番号を付けてみた。
※p.35 の解析図にミスがあるようだ。文末の ')' は1行目の右端(done の直後)に置かれるべきものであろう。そうしないと訳文と矛盾する。私の図は訳文に従って作成してある。
私の考えでは、
動詞のそれぞれについて、
(1)それを述語動詞とするような文(「要素文」と呼ぶ)を想定し
(2)その要素文を「原文全体の中で使われるかたち」に作りかえる
という作業を行ったうえで、さらにそれらを組み立てて元の文に辿り着く
というプロセスを踏むことで、階層構造を持った作文力を構築することができる。
もう少し詳しく説明してみる。ここでも英文構造図が威力を発揮する。
まず、@による要素文は下図左側のようになる。それを頭の中で操作して、右側のように変える(ことができるように訓練する)。
次にAによる要素文。これも左のようなものをまず考え、右側のように変える。
Bによる要素文。
Cによる要素文。
Dによる要素文。
このように要素別に扱う訓練をして、慣れてきたら順に統合して原文を再現できるようにするとよい(これは短期記憶で足りるだろう)。その意味からは「本書の学習プロセス」に「STEP 5 リプロダクションに挑戦」みたいなものがあればもっとよかったかもしれない。まあ、素材は目の前にあるのだから、あとは各自が必要に応じて自発的にやればすむことではある。