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2013年05月05日

教えるよりも学ばせる 〜学習主体のあり方〜

(Facebook に書いたもの。)

先週の(武道の)稽古には年配の新人さんがやって来た。その日は見学ということだったのだが、「ちょっとやってみますか?」と言ったら乗ってきたので、六尺棒の回し方を教えてみた。

私はこれまで何十人もの初心者に同じことを教えているし、一人ひとりの得手不得手に応じて最短距離で教えるだけのノウハウもあるつもりだが、それでもさすがに今回の見学者は少し年配なので若い人よりは手間取るのではないかと思った。しかし実際には、これまで教えた中でも特にスムーズに習得した。

そして、昨日の稽古。その新人さんも今回は正式参加した。最初の課題は先週教えた「棒回し」。たとえ一旦は「習得」したことであっても、1週間も放置していると信じられないくらい抜け落ちてしまうものだ。そこで今回は、「先週はかなりいいところまで行っていたので、そのレベルまで自力で復原するように」と指示した。(実は先週の段階で今回の指導を予測して教えているのだが、教えられた側はそんなことは知らない。)

彼は黙々と棒を回し続けた。私はアドバイスを一切せずに見守った。最初はぎこちない動きだったが、30〜40分も続けているうちに先週達成したレベルに近いところまで戻ってきた。

この新人さんはなかなかストイックな稽古に耐えられる人だ。これも一つの<個性>なのだろう。ちなみに、こういうタイプの人は、基礎の動きはうまくなる。ただし、それだけでは創造性を鍛える機会が不足してしまうから、いわゆるマニュアル人間で終わる可能性も否定できない。

それをカバーするために行っていることの一つが、上記の「自力で」という部分。指導者として「丁寧な教え方をする」のはとても重要なことではあるが、それ以上に「教えすぎない」ということを私は重視している。学習者が自分で答えを見出せるように日頃から訓練しておけば、基礎から応用に進むときにぶつかる壁を低くすることができるからだ。

これはとても大事なことなのだが、これを実行するには指導者と学習者の双方に忍耐力や論理的先見力が要求されるし、ときには耐えられずに逃げてしまう者もいる。しかし、学びの成果を高めるには、この種の苦労は避けられないはずだ。「聞き流すだけで英語が…」ではないが、自身に対する負荷が小さすぎると、いつまでたっても鍛えられないからだ。

もちろん人間である以上、誰にでも(もちろん私にも)分野・テーマによる向き・不向きというものがある。一方で「一事が万事…」ということも事実だろう。言い方を変えるなら、向き・不向きについても学習者一人ひとりの中に<個別性/特殊性/一般性>が階層構造を成していて、その全体がその人の<学習主体としての個性>であるわけだ。

学びに関しては<対象>(往々にして教材)や<方法>ばかりが注目され、この<学習主体としての個性>が説かれることは比較的少ないと思う。しかし、「自らの中にこの<学習主体としての個性>をいかに創造するか」という観点から学習・指導のプロセスを見直してみると、日常に近い部分でのマメな積み重ねが極めて大きな影響力を持っているという事実を痛感させられることが多いはずだ。

いわゆる<才能>も<学習主体としての個性>の一部であろう。その大半は<無意識的な積み重ね>により形成されるものだと私は考えている。つまり、形成過程が無意識であるなどのせいで原因がわかりにくいという特殊性はあるとしても、他の<学習主体としての個性>と本質的に違うわけではないということだ。少なくとも神秘的なものではない。

となれば、われわれ凡才が<才能不足>を補うためにとるべき方法は、<無意識的な積み重ね>の逆、つまり<方法論に裏打ちされた意識的・目的的な努力の積み重ね>だろう。そして、それを可能とするような<学習主体としての個性>を創造することこそ学習・指導の基礎として特に重要なテーマだ、ということになるのではないだろうか。

バックボーンとなるべき<方法論>を構築し具体的素材を準備するのは、研究者・指導者の役目だと思う。一方の学習者は、何よりも<学習主体としての個性>を創造し、「学習」を実践することが求められる。この両者を区別することは極めて大切だ。

もちろん私自身は両方をやりたいと考えている。いわゆる「理論と実践との統一」であり、30年来の関心事でもある。このたびの大掃除(2週間前から行っている)もそのための環境整備なのだ。



posted by 物好鬼 at 13:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 学習一般について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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