「受験英語のプロフェッショナル・安河内哲也 a.k.a. Ted Eguchiの書き下ろし英文小説!!」というのは同書の帯に書かれた文句。畏友・安河内氏が満を持して書き下ろした英文ライトノベルで、(自称)D級ノベリストとしての処女作となる。
ストーリーは単純明快でありながらなかなか楽しませてくれる。難易度は「センター試験基礎レベル・英検準2級〜2級レベル」で、分量は5000語程度(ダウンロード音声は40分強)となっている。それが8つの章に分割されているので、不慣れな人でも息切れせずに楽しめると思う。私は歩きながら一気に聴いた。
音声は女性ナレーターによるもので、聞き取りやすいアメリカ英語。速すぎず、さりとて不自然なほど遅くもない(40分で5000語だとすると分速125語)。テキストを見ながら何度も聴き、慣れてきたらどんどんマネしてみるとよいだろう。
デザインもイラストもよくできていて、計算され尽くした感じすらある。コンパクトで持ち運びやすいのも長所。
これは薄手の教材ではあるが、1冊読み通せば大きな達成感があるはずだ。それに比べれば、テストに出てくる「長文」など実は「短文」にすぎないと感じることができるだろう。
また、この本が気に入ったら何度も繰り返すとよい。必ずしもこの教材である必要はないが、気に入った少数の教材にトコトンこだわってみることは、実力向上のために極めて大切なことだ。
なお、本書はあくまでも「英文多読シリーズ」の第1弾である。Facebook 上では著者が舞台裏を書いてくれたりするのだが、執筆・制作は順調に進んでいるらしい。次回作以降にも大いに期待したい。
教科書や問題集以外で英文に触れる機会の少ない人は、これを機に多読にチャレンジしてみるとよいと思う。そういったことが大きな転機となるかもしれない。そして本書はそのための手頃な「1冊目」になるはずだ。定価630円(税込)と購入しやすい(というより採算を度外視した?)価格設定なので、ぜひ気軽に購入し、気軽に取り組んでほしい。