日本語の発音で「り」と「でぃ」を比較すると、日本人の耳には違う音として響くと思う。環境が悪ければ聞きわけにくいこともあるだろうが、静かな場所でハッキリと発音されれば、聞き間違えることはないはずだ。
ところがこの両者をアメリカ人に聞かせると、まず識別できない。日本語のラ行の子音は “d” の音に比較的(かなり?)近いものであるにもかかわらず、英語には存在しない(だから彼らには馴染む機会がない)ものだからだ。
たしか浪人時代だったと思うが、これを実際に試してみたことがある。そのときは「りんご」と「でぃんご」だったが、相手のアメリカ人には識別できなかった。何度も繰り返してみたが同じだった。
こんなのに比べれば、英語のLとRなんて大したことはないとわかるだろう。LとRは日本人には区別できないなどと大嘘を言うセンセイもいるが、若いうちに正しく訓練すれば、発音も聞き分けも(音声学的に完全ではないとしても)充分正確にできるようになる。もちろん私も18歳のころにやった。
それより難しい(?)のは、英語の “ni” と日本語の「ニ」の違いである。日本語の「ニ」は「ニャ・ニ・ニュ・ニェ・ニョ」のイ段であって、英語の “ni” とは(母音もだが)子音部分が明確に異なっている。“ni” を無理矢理カタカナで書けば「ヌィ」に近い。これは “si” が「シ」ではなく「スィ」に近いのと同じことだ。
ただ、英語の “ni” と日本語の「ニ」との対応関係は単純(1対1)なので、識別できなくても聴き取りに困ることはない。むしろ、識別できない人の方が、違いに煩わされずにすむとも言える。これは “shi” / “si” と「シ」との対応関係(2対1)とは異なる事情である。
そのせいかどうかはわからないが、日本では “shi” / “si” と「シ」については学校でも教えられるのに、“ni” と「ニ」についてはほとんど無視されている。
とは言うものの、“ni” と「ニ」はネイティブの耳には明らかに違う音として聞こえるのだから、あまり遅くならないうちに訓練しておいた方がよいと思う。