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2012年04月30日

『日本人のための英語発音完全教本』

私は高3の頃に発音の勉強に熱中したことがある。本格的な教材は見つからなかったが、発音記号を一つひとつ攻略し、歌を使って反復練習したものだ。身近な英語教師たちのレベルはすぐに追い越した。そして翌年(浪人時代)に知り合いのアメリカ人から「あなたの発音は日本人のものとは思えない」と言われたことに気をよくして勉強・練習を続けていたら、東大教養学部の英語の授業では「発音の専門家」という名誉ある綽名を教官からもらった(その教官の発音は見事なクイーンズイングリッシュであった)。その後10年以上たってからリズムの重要性に気が付いて更に勉強。一つのCD素材を300回以上反復することで高い成果を上げたと自負している。

これはまったくの余談だが、駒場寮に住んでいた頃、同じ部屋の住人から「“wool”って、本当は『ウール』じゃなくて『ウル』って発音するんですよね?」と聞かれたことがある。それに対して私が「いや、正確には /wul/ だよ」と実演してみせたところ、その彼は全く真似できなかった。これは当然のことで、/l/ は言うに及ばず、/w/ も /u/ も 基本練習なしでは正確に発音できないのだ。そんな音が3つ連続した語なのだから、簡単に真似できないのも無理はない。

さて、そんな私ではあるが、ひょんなことがキッカケで、ほんの数日前に音声面の勉強を再開した。今回は一般向けの本から専門家向けの本までターゲットを広げ、複数の大書店を何度も何度も訪れては書棚の本を片っ端から取り出して比較検討してきた。そして今日の午後になってようやく「これを買おうかな」という段階まで到達していたのだが、レジに行く直前になって見つけたのが、この『日本人のための英語発音完全教本』だった。奥付を見ると、一昨日刊行されたばかり。道理で気付かなかったわけだ。B5判252ページで、全ページフルカラーである。その圧倒的な詳しさと分かりやすさに驚いた私は、ためらうことなくその本を購入した。

目次は次のとおり。

第1章 英語発音を学ぶ前に
  §1 発音が日本の国際化を阻んでいる?
  §2 英語発音に必要な息、声、筋肉をつくる
  §3 発音の知識を身につけよう
  §4 本書の構成と学習の進め方
  §5 イギリス英語とアメリカ英語

第2章 発音のための基礎知識と筋トレ
 第1節 声に関する体の器官の名称と基礎知識
  §1 調音器官
  §2 有声音と無声音
 第2節 英語らしく発音するための最重要課題とトレーニング
  §1 英語の「息」と「声」
  §2 準備体操
  §3 英語の息をつくる
  §4 英語の声をつくる
  §5 舌と顔の筋肉を鍛える
  §6 英語の息と声 究極のトレーニング法
  ●英語発音のための10分間エクササイズ

第3章 子音
 第1節 子音の基礎知識
 第2節 子音の発音
  §1 鼻音
   1. /m/
   2. /n/
  (以下略)
  聞き取りにくい子音の発音
  発音解説(コラムとして点在)

第4章 母音
 第1節 母音の基礎知識
  §1 母音の分類
  §2 英語の母音の数
  §3 イギリス発音とアメリカ発音の違い
  §4 母音図
  §5 母音の発音と唇の形
  §6 母音の共鳴スポットと声のベクトル
  §7 位置によって違う母音の長さ
  §8 母音の発音をする前に留意すべき点
 第2節 母音の発音
  §1 前舌母音
  (以下略)

第5章 音の連結
 第1節 語中の音の連結
  §1 語中の子音の連結
  §2 歯茎音、歯音の連結と舌の位置
  §3 子音の連結による音の添加と脱落
  §4 語中の母音の連結による半母音の添加
  §5 語中の強母音の半母音化とあいまい母音化
  §6 長い単語の読み方−アクセントとドッグブレス
 第2節 2語の連結、同化、脱落
  §1 英語の強弱リズムと機能語・内容語の関係
  §2 母音と子音の連結
  §3 母音および子音の弱音化と脱落
  §4 2語の子音連結
  §5 母音+母音で半母音の添加
  §6 2語の連結による音の脱落
  §7 2語の連結による音の同化
 第3節 ナチュラルスピードで英語を読む
  §1 英語の等時性リズム
  §2 イントネーション
  §3 句末原則
  §4 本来のアクセントと位置が変わる場合
 第4節 まとめ
  §1 アメリカ発音のまとめ  子音/母音
  §2 イギリス発音のまとめ  子音/母音

このうち、第2章で紹介されている基礎知識は「身に付ける」という観点からなされたもので、他ではなかなかお目にかかれないと思う。それも、とても詳しい。

また、第3章・第4章における各「音」の解説は、写真・イラスト・図・文章を併用して非常に詳しく丁寧になされている。英音と米音の違いについてもかなり踏み込んで解説されている。

第5章も秀逸。

CDとDVDが1枚ずつ付属している(最後の「まとめ」のみダウンロード)。

全体的な評価としては、音声学の専門家になるのでもない限り、これ1冊あれば足りるはずだ。他の本は一切必要ないと言い切ってもよいくらい、圧倒的なボリュームと分かりやすさを誇っている。本格的に学びたい人には必携の1冊だと思う。特に英語教師にお勧めしたい。


※リンク先に紹介動画がある。
※サンプルページなどはこちらで。

画面上部の英文構造図作成ツール『図でわかる英文の構造』(初版)もヨロシク!

posted by 物好鬼 at 20:30| Comment(4) | TrackBack(0) | 個別の教材について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ありがとうございます。
特に、ドッグブレスと母音の共鳴スポット・声のベクトルは、今までに英語発音教育で取り上げられていない内容です。聞いているだけでは分かりません。

アスク出版の担当者が、ここに賛辞が書いてあると知らせてくれました。

助かります。

今後ともよろしくお願いします。

竹内 真生子
Posted by 竹内 真生子 at 2012年05月01日 12:50
著者の方から直々にコメントがいただけるとは思っておりませんでした。非常に光栄に思います。

本文中に書いたことは私の本音です。内容面も素晴らしいですが、出版社に勤務している者としては、編集面のレベルにも感心しております。

また何かありましたら、よろしくお願いいたします。
Posted by 物好鬼 at 2012年05月01日 13:44
ご無沙汰しています。英語学習現在進行形の吉プーです。記事を拝見して、この本を是非買ってみようと思いました。この分野における決定版的な存在になる予感がします。
Posted by 吉プー at 2012年05月05日 11:07
ご無沙汰してます。
(ブログのリンクは数日前に更新しておきました。)

この本、メチャクチャ詳しいです。オリジナルなノウハウについてはまだ充分に評価できてませんが、それでも音声学を理論・実践の両面からシッカリ押さえた上で書かれていますので、信頼性は高いと思います。

蛇足ですが、第2章のトレーニングの中に「スワイショウ」(甩手)とか「あいうべ体操」とか健康系のものが出てくるのが興味深いです。
Posted by 物好鬼 at 2012年05月05日 11:22
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