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2011年10月20日

構文を説明できるか ≒ 公式を証明できるか

数学の問題を解くとする。例えば2次方程式の解を求めるとしようか。その際、いわゆる解の公式を用いて答を導いたとして、それは果たして「できた」うちに入るのだろうか? 答を元の式に代入すれば確かに等号が成り立つ、というのでは不十分である。公式を使う以上は、その公式の正しさを説明(証明)できる必要がある。あえて言わせてもらうなら、それができない人にはその公式を使う資格はない。

なぜか? それは公式の使用とは、「ここはお互いに分かっていることだから省略して近道しますよ」ということだからだ。実際のところ、ある程度複雑な問題を解くときには、こういう近道なしでは却ってややこしくなってしまうから、公式の使用は避けられない。しかし、だからこそ、あくまでも方便であるということを忘れてはならないと思う。つまり、証明できない公式を使うのは「ズル」でしかない、ということだ。

かく言う私は高校生の頃、自分自身に対して「証明できない公式は使わない」というルールを課していた。それで、数学でも物理でも化学でも、教科書や参考書に登場するあらゆる公式・定理に関して証明方法を学び、自分に必要と思われるものはソラで再現できるようにしていた。実際のところ、そういうプロセスを踏まないと正確に覚えられない、というのもあったかもしれない。意味の分からないものを無理矢理覚えることが苦手な子供だったのだ(それでも購入したレコードについては歌詞を全部覚えていた)。これは損な性格だろうか?

しかし、物理などはそれだけで得意科目になったと言ってもよいくらいだから、決してムダではなかったのだろう。少なくとも私には良い学び方であったと思っている。
(物理に関してはもう一つ、「問題を解くのに必要な物理量を問題文と図から一つ残らず正確に抽出する能力」というのも必要なのだが、それは早い段階で力学の優れた参考書に出会っていたおかげで比較的簡単にクリアできた。そのポイントは、「大きな、分かりやすい図を、労をいとわず描くこと」。考えてみれば、あの頃から図式化が好きだったわけだ。)

同じことが英語の構文にも言える。つまり「なぜそんな形になるのかが分からない構文はできるだけ使わない」ということだ。逆に言えば、使いたい構文については、その成り立ちについてできる限りの理解を試みること。少なくとも私の場合、そういう理解が伴わないと、使っていてもスッキリしない。たとえ形式上は100%正確な言い方をしていると思われる場合でも、ピンとこないと実感がこもらない。それでは気持ち悪いし、充分なコミュニケーションとは言えないだろう。

もちろん自然言語の文法には、理屈で割り切れない(or 割り切りにくい)部分が少なからず存在している。だから、専門家の間でも考えが分かれることがあるし、そのようなものについてはあまり深入りする必要はない(でも深入りするのも楽しいと個人的には思う)。とは言え、ヨリ基本的な構造との間のつながりを理解し、具体例において実感できるように取り組むことは、非常に大切である。

以上は、形式に中身を伴わせるという話であるが、逆に、中身に形式を伴わせるというのもある。

実は私の近所に「やむをえず」を「やもうえず」だと勘違いしている人がいる。その表現を使うときのその人の内容理解にはとりたてて問題はないのだろう。その人は何十年も生きてきて、その中で具体的な経験をたくさん積み重ねてきているはずだからだ。しかし、こういう形式上のミスはやはり恥ずかしい。そしてこのミスを避けるには、要は「已むを得ず」(“cannot help”に似ている)なのだということを知っていれば足りるのだ。ちなみに私の場合は、口語化される前の刑法にあった「已ムコトヲ得ザルニ出デタル行為」というのが役に立ったように記憶している(少数派?)。

これと似たようなことが英語の構文や慣用表現についても起きる可能性がある。だから、変な言い間違いを避けるためという意味からも、内容と形式との関係は少しでも理解していたほうがよい。単語の綴り間違いを防ぐのに語源が役立つのも、これと同じ理屈である。
posted by 物好鬼 at 22:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 学習一般について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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