今日の範囲について言うと、疑問文の作り方についての説明が非常に懇切丁寧だという印象を持った。
ただし、付加疑問文においては、イントネーションに簡単にでも触れてほしかったと思う。
あと、これは蛇足だが、「キュレーター」という語は初めて知った。
さて、第1部の全体構成だが、書く側としては本書全体の中で最も悩ましい部分だったのではないかと思う。
この部分では、品詞、要素、文型、文の種類、肯定否定……といったテーマが複雑に絡みあっている。しかし、書物の構成はツリー構造(+相互参照)というかたちにせざるをえない。そのため、複雑な構造について、整合性を維持しながら、なおかつ分かりやすさも実現するというのは、非常に骨の折れる仕事なのである。それは私自身、新著を企画していたときに痛感したことである。
さて、同書を見てみると、最初に名詞と動詞だけを取り上げている、ということに気付く。補語に形容詞が来る場合を無視すれば、5文型は(受動態も含めて)いずれも名詞と動詞だけで済んでしまうからである。
これは面白い方法ではある。しかしながら、私はこの方法には批判的である。
補語が形容詞である場合を最初の段階で紹介しておけば、補語に(叙述)形容詞句としての前置詞句が来る場合についても、「同じ品詞のパーツと入れ替える」という考え方で一貫した説明ができる(形容詞節は限定形容詞なのでダメである)。しかし、同書の方法(補語が形容詞である場合を一旦無視する)ではその点で体系性に傷が付いてしまうのである。最初に紹介する品詞の種類は少ない方が理解しやすいのは確かだが、そのために体系性を犠牲にするのはもったいない気がする。
※全体を「同じ品詞のパーツと入れ替える」という方法で一貫させる場合、前置詞に関する単元の位置は微妙に変わることになるはずである。前置詞句は形容詞・副詞の位置に置けるパーツであり、節(第2部で扱われている)や準動詞句(第3部で扱われている)と共通した性質を持っているからである。
もう一つ、「肯定文と否定文」は4種類の文全てに関わることなのだから、平叙文の最後あたりで説明したほうがよかったのではないだろうか。そうすれば、疑問文以下の単元では「ここでも肯定と否定がある」としてスムーズに導入できたはずである。(実際には付加疑問文のところで否定形を使ってしまっている。)
いずれにしても、この第1部こそが、(見かけ上の簡単さとは裏腹に)著者にとっても読者にとっても最大の山場であるのは間違いない。そこを無事に通過させられるための構成を考えるのは非常に難しいことではあるが、第1部全体の鳥瞰図を用意してやることができれば、多くの読者の助けになるのではないかと思う。