大ざっぱに言えば、叙述用法の方は補語として用いられるのに対し、限定用法の方は修飾に用いられる。形容詞の大半は両方に用いられているし、比較などの性質も両者で共通している部分が多い。そのせいか、上の2つは(同一品詞中の)「用法」の違いとして扱われるのが普通である。
前置詞と接続詞の場合は少し事情が異なっている。前置詞は後に名詞句を従えるのに対し、接続詞は後に文を従えるという違いがあるのだが、そのため(なのか何なのか)、両者は別々の「品詞」ということになっている。しかし、“before”などのように両方に用いられる語も少なくないという意味では、形容詞の場合と共通した構造になっている。
さて、上記2例の扱いが異なる理由はともかく、英文法(特に文の基本構造)を学習する際には、形容詞の場合も「叙述形容詞」と「限定形容詞」という別々の品詞として理解するぐらいの方が安全なのではないかと私は考えている(そうしている学者もいるようだが、手元の文法書には見あたらない)。
もちろん、大事なのは名称ではなくて、その中味を学ぶことである。たとえ「用法」の違いとして扱うにしても、それらが持つ性格の違いを明確に理解しておかないと、文の構造を学ぶときに混乱してしまう可能性が高い。理解さえできていれば、用語はどちらでもよい(実用上は、である)。
言うまでもないが、私の新著では、両者を別々の場面で扱うことになる。文の中での役割が違うからである。