まず、こういう図式化は構造理解のための(そしてその理解力を高めるための)手段であるから、これ自体が読み・書き・聞き・話す能力の向上にそれほど寄与しないとしても、まあ、それは当然のことであろう。
おそらくであるが、この Sentence Diagram という方法は、すでに直感的・自然成長的なかたちで英語を習得しているネイティブスピーカーが自らの英語能力について反省するための道具としては、少なくとも普及当初においてはうまく機能していたのだと思う。逆に言うと、そういう前提を満たさない人には役立ちにくいだろうとも想像できる。
「そういう前提を満たさない人」の代表格は我々のように英語を外国語として学習している者であるが、そういった人たちにとって<理解>の後に必要なのは、その理解を実用に結びつけるための練習であるはずだ。なのにそれがうまくいっていないのだとすれば、その原因を探る必要がある。
私の考えでは、この Sentence Diagram という方法には、
・なかなか緻密である
という長所がある一方で
・図式化の作業が面倒臭い
・構造がわかりにくい
という短所がある。
最後の「構造がわかりにくい」には複数の側面があるが、実際の言語は語順どおりに処理されていくものであることを考えると、「原文の語順が維持されていない」という点は致命的だろう。
そしてそれゆえにこの種の図式から実用訓練への接続は困難なのであろう、と私は考えている。
…というわけで、リンク先の例文を私の方法で図式化したものを提示しておきたい(右側は Sentence Diagram)。
自画自賛ではあるが、私の構造図は
@各要素をタテヨコに整然と配置してあるので、肝心の文構造がわかりやすい
(ある程度慣れれば書かずにソラで処理できるようにもなる)
A原文の語順が維持されているので、読み・書き・聞き・話すことにもつなげやすい
という特長を持っていることが見て取れると思う。
※アメリカの教育関係者さんたちにしても、既存の Sentence Diagram を批判的に扱うのであれば、安直に投げ捨てるのではなく、その方法のどこに問題があるのかを分析したうえで、その問題を解消する方法を探るべきだったのではないだろうか。